【地獄と天国】実録ふつうのおっさん からだも精神もズタボロ地獄・・・18

この頃になると、さすがのいつも強気のOさんでもさすがにノーローゼ気味となった。新宿の喫茶店でいつも逢うのだが、いつも北海道に帰省するたびにおみあげをもらっていた。早口のマシンガントークの始まりだ。実家の話と店の話だった。日々悪く変化していく日常生活と店を任せた甥に後悔をしていた。亡き父の話をするとき時折目が潤んでいた。葬儀の時の葬儀屋の不手際が気に入らなかったので、「責任者を呼べ!」と抗議した。北海道の田舎では、当たり前とされていたカタログとは違う祭壇に怒り心頭だった。

 

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田舎の人は「しょうがない」で終わる。地方の常識というのだろうか?長年そういう状況にあると人々はマヒしてしまうのだ。抗議すれば目立つので田舎の人は文句があっても「しょうがない」と我慢する癖がついてしまっている。都心でお店を経営しているOさんとしては、こんな子供だましのような不祥事が許せるわけがなかった。だからとことん責任者から社長を呼び出し、経営方針や企業理念を問いただした。一人の父の最期に静かにお別れをしたかった。葬儀屋はいかにして費用をかけないで利益を上げるということしか考えていなかった。

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そしてとうとう地獄への入口に来てしまった。従弟が銀座店を営業していたが、経営が思わしくなく、統合しようという話が出ていた。Oさんの健康状態とここにきて実家の問題がダブルパンチで肉体的にも、精神的にも追い詰められていた。だからOさんは弱気になって脇が甘くなっていた。昔から知っているOさんがそんな酷い状況だったとは、知らなかった。

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そして2号店のオーナーの従弟に新宿店を2千万と言う額で譲渡したのだ。Oさんは一括で譲渡希望していたが、「今そのお金がない」と言う理由で役員報酬として毎月支払うと言う条件を突き付けられた。店から離れたかった?自分の子どもである●●●を従弟に渡したかった?甥はすでに不祥事だらけで問題だから、二度と信頼を取り戻すことができない。

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その後甥は、売り上げ金からネコババするようになっていった。監視カメラがレジを見えるようにしているとはいえ、隠れてこそこそとレジから盗んでいた。その金は、ゲームに課金されていた。甥はOさんに問い詰められ暴露した。もうこの頃になると信頼関係もあったものではない。店に予約の電話がかかって来ても、「その日は予約で満席です」とウソをつく始末。

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アルバイトが次々辞めていくのは、この甥が原因だった。190㎝の大男が店内をウロウロして、自分の身勝手でアルバイトをこき使い、店内で女子大生アルバイトの前で、「オタ芸」やってみたり、店の食事をガツガツと遠慮なしで大食いしたり、悪い噂しかなかった。これらは辞めていったアルバイトの報告だった。もう限界に達したOさんの決断は、店の損害金を全額給与から天引きすることだった。

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店のお金を着服するということは横領であり、窃盗になる。本人もわかってやっていたことなのだ。だが窃盗事件を証明して告訴するには、いろいろハードルがあり、今のOさんはそれをやる気力がなかった。問題が山積していたのだ。結局甥をある店に呼び出して、話し合いをした。そこでふてくれた甥は、今までの態度を急変させて、叔父であるOさんに喰ってかかり、大声でけんかを仕掛けてきた

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「あのなーオマエはなにさまのつもりなんだー」と店内のお客が全員振り向くくらいの大声で、Oさんを罵った。損害賠償を甥にさせるため、念書を書かせたのだ。甥は多少の抵抗を見せたものの、証拠を突き付けられたら観念するしかない。念書を前に、震えてサインをしたそうだ。いくら190㎝で大威張りしても所詮Oさんの前では、小僧でしかなかった。粋がってみても反抗期の少年のようにグレただけの反抗だった。

 

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しかしお金を横領したことは反抗どころか犯罪だから、例え甥で身内であろうと見過ごすわけにはいかない。それが真っ正直な経営をして来たOさんのポリシーでもあった。曲がったことが嫌いで、不誠実な経営をせず、消費税というハードルを越えてやってきたのだ。国は中小企業ばかり苦汁を飲ませ、中小企業のイジメを常態化させている。特に飲食店は毎日の利益の上にあるので、お客が来店しなければお店は潰れるしかない。これを自業自得と言えるのだろうか?税金で寝ていてもヒマしていても毎月の給料が保証され、休みが保証され、年金が保証された公務員とは違うのだ。